初心者からプロまで…スノーボードホットワクシングのかけ方

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ボードを購入した際、滑りやすさを保持し、長期使用を考慮してワックスの塗布は欠かせません。ワクシング方法はいくつか存在しますが、自分でのメンテナンスにおいて、アイロンを使ったホットワックスが最も推奨される方法です。今回は、ホットワックスの塗り方について説明します。

1.ワックスの種類

ワクシングの手段として、以下のようないくつかの方法が挙げられます。

・液状で直接塗るものやスプレー形式

これは、滑走材が液状になっており、ソールにそのまま塗布するタイプです。表面には滑走材が残りますが、中に浸透することはほとんどないため、ワックスの効果が短期間で消えてしまうことが多いです。実際には半日も持たないことが多く、滑りが悪くなった際の応急処置として使うのが適しています。スプレー形式のものも存在しますが、用途は直塗りタイプと同じです。

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・コルクを使って固形ワックスを直接塗布

アイロンを持っていない場合の代替手段。固形のホットワックスをソールに直接適用し、コルクで擦り込むことでワックスを溶かして浸透させる。しかし、手間がかかる割に効果は限定的なので、特に推奨はできない。

・アイロンによるホットワックスの塗布

市販の固形ワックスの多くはホットワックス向け。ワックスをアイロンで溶かしてソールに塗り込む方法で、高品質なボードのソールはこのホットワックス処理を前提として製造されているので、実施することが推奨される。大体の手順は、アイロンでワックスを溶かした後、冷ましてから余分なワックスを除去(スクレイピング)、そしてブラシングする。GALLIUMやSWIXなどのワックスブランドが詳しい説明をしているが、実際には細かな違いが存在する。例えば、どのブラシを使用するかなど。この度は、ソールの特性を考慮した一般的な手法と有効なポイントを合わせて述べるので、是非参考にしてほしい。

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ワックスがソールに浸透する原理

2-1.滑走時の抵抗と効果的なワックス

ワックスは、雪と滑走面との間の抵抗を減少させる目的で塗布される。この抵抗は、大きく4つの要因に起因するとされている。

1.水分の付着による抵抗

雪道での車の運転経験がある人なら感じたことがあるだろう。気温が0℃近辺で路面が少し溶けている日は特に滑りやすい。しかし、気温がこれより低ければ、ブレーキをかけても滑りにくく、気温が上がると溶け出す水が増えてブレーキの効き目が強まる。

スノーボードが雪面を滑る際も、同じ原理が作用していると考えられる。滑走面が雪の上を滑ることで生じる摩擦熱が、雪の表面を僅かに溶かし、この薄い水膜が摩擦を軽減する潤滑剤のような役割を果たしていると言われている。

それに、気温が上昇すると雪は過度に水分を吸収する傾向がある。水分が多く含まれると、水の吸着力(多くの人が知っている表面張力)が抵抗として作用すると言われている。

ワックスはその撥水性で水の付着を防ぎ、この吸着力を低減させる効果がある。さらに、滑走面にストラクチャーと呼ばれる細かな溝を入れて排水性を向上させる方法も考えられるが、スノーボードの場合、高品質なモデルでさえ、初めからこのストラクチャーが施されていないことがよくある。

2.乾摩擦による抵抗

気温が下がると、滑走面と雪の接触部分での雪の溶ける量は少なくなり、雪の粒子が直接滑走面に触れることが多くなる。このような抵抗を「乾摩擦抵抗」と称し、気温が低下するとこの抵抗は増加する。

ワックスはこの抵抗を低減する役目があるが、柔らかいワックスを使うと、低い気温の際の雪の粒子がワックス内に食い込むため、その効果は限定的になる。硬いワックスは雪の粒子を滑らかに排除し、抵抗を軽減するため、低温用ワックスは通常硬さが強調される。

3.汚れや不純物による抵抗

春の汚れた雪では経験があるかもしれないが、滑走面が黒ずんで滑りにくくなることがある。これは、滑走面についた不純物が雪との摩擦を増加させる結果である。通常のソール材はポリエチレン製で、静電気を帯びる傾向があるため、ゴミを引き寄せやすい。

このような不純物による抵抗を減少させるためには、フッ素系のワックスが効果的。テフロン処理さ

れた調理器具と同様、不純物の付着を減少させる。また、グラファイトを配合したワックスもあり、これは静電気を放出する効果があり、不純物の付着を抑制する。

4.静電気の影響による抵抗

静電気が引き起こすゴミの付着とは別に、静電気そのものの特性によっても抵抗が発生する。静電気を帯びた物体間には引き合う力が生じ、それによって滑りが劣化する。特に気温が低く、雪が乾燥している時にこの抵抗は顕著となる。

静電気の影響を軽減するための対策としては、ゴミの付着を防ぐのと同じく、グラファイト配合のワックスを用いて放電させる方法が効果的である。

2-2.ホットワックスが浸透する仕組み

ワックスがどのようにして浸透するのかを理解するには、滑走面であるソールの構造についての知識が必要だ。少し技術的な話になるが、その詳細は次の記事で触れている。

ホットワクシングに役立つスノーボードのソールの基礎知識

ソールにワックスを置き、アイロンで暖めるとソールは熱によって膨らむ。ソールを形成するポリエチレンの分子数は変わらないので、これは分子間の空間が増えることを示す。結晶状の部分の間隙は狭いため、非結晶状の部分の空間が拡大し、ワックスの分子が浸透する。これがワックスが浸透するメカニズムだ。

時間がたつと浸透する量は増加するが、分子間の空間は限られているので、一定の時間後にはさらなる浸透はなくなる。また、高温では浸透が増えるが、過度な温度はソールにダメージを与えるリスクがある。

アイロン温度が100℃のとき、約3分で浸透は最大になる。その後、冷却し、スクレイピングしてブラッシングするステップに進む。

2-3.繰り返しの意義

ワックスの取扱説明書には、アイロンでの塗布からブラシまでのステップを1セットとし、これを数回実施することが記載されている。実際の推奨回数は1週間から4週間の間に9回から50回と幅がある。初めは暖かい気温用の柔らかいワックスからスタートし、回数を増やす毎に冷たい気温用の硬いワックスへと切り替えることが勧められている。

多くのユーザーからは、この回数は実際的でないと感じられるかもしれない。しかし、繰り返すことの背後には一体どのような意義があるのか、ここで詳しく説明したい。

物体には元の形状に戻ろうとする弾性という特性が存在する。しかし、ポリエチレンを含む多くのプラスチックにはクリープという現象が起き、持続的な力の影響で徐々に形が変化し、その変形が元に戻りにくくなる。

ゆえに、熱で拡大したソールの分子は、冷却時にワックスの分子が入っていることで元の形に戻りづらく、経過時間とともにその回復力が弱まる。再度加熱されると、分子間の隙間が一定量広がり、さらなるワックスを取り込む。このプロセスを繰り返すことで、ソールの構成分子が次第に密接し、滑走効果も向上する。

3.ホットワックス施工のためのツール

ホットワックスを適用する前に、必要な道具を一覧にします。

1.アイロン

ワックスを溶解させるためのアイロンは絶対的な要件です。GALLIUMのようなワックスブランドからは専用のアイロンが提供されているものの、それはかなり高価です。一応、通常の家庭用アイロンでも使用できるが、細かい温度設定が難しい。ソールを痛めたくないなら、専用のアイロンの購入がおすすめです。また、一般的な家庭用アイロンには蒸気を放出する穴があるが、これが邪魔になることもある。

2.ソリッドワックス

ソリッドワックスの詳細については深く掘り下げると終わりが見えないが、基本的な情報をここで紹介します。

ソリッドワックスには、ベースワックスと滑走ワックスの二種類が主流です。ベースワックスは、滑走性だけでなく、ソールの保護のためにも施工するのが望ましい。一方、滑走ワックスには多くの場合フッ素などの特別な成分が含まれており、これはベースワックスの上から適用し、滑走の効果を高めるためのものです。価格にも大きな差があり、滑走ワックスは多くの場合、ベースワックスの2倍以上のコストがかかることが一般的です。予算が限られている場合、初めにベースワックスから始めるのがおすすめです。

3.ワクシングシート

ワックスをソール上で均一に広げるためのシート。これは、ソールが過度に加熱されるのを避け、ワックスを均等に塗布し、不要な過剰なワックスを防ぐことで後の作業を簡単にする効果がある。

多くのワックスメーカーはこのシートの使用を推奨しているが、筆者は必要性をそれほど感じておらず、使用していない。シートがワックスを多く吸収するので、実際にはワックスが無駄になることがある。シート自体のコストはさほど高くないので、試してみる価値はあるかもしれない。

4.ワックスリムーバー

ワックスを塗布した後、余分なものを取り除くための直方体形状のプラスチック。多くのワックスブランドがそれを提供しているが、しっかりとした角を持つプラスチックの定規でも代わりに使うことができる。

熱心な使用者の中には、薄いものの方が柔軟に使えて細部のワックス除去が容易だと感じる人もいる。しかし、専用のスクレイパーで薄いものは少ないため、そのような場合、定規を利用する方が便利であるかもしれない。

長い間、筆者は様々なスクレイパーを試みたが、最終的に気に入ったのは100均で手に入る三角定規だ。多くの人が小学生のころに使っていた、2枚一組のものを指す。

スクレイパーは基本的に使い捨てのアイテムで、ソールからのワックスを繰り返し取り除くと、その角が丸まり、使用が難しくなる。角を再生するためのシャープナーもあるが、無限に利用することは困難だ。また、取り除いたワックスで汚れることもある。

100均の三角定規セットには1つあたり3の辺があり、2枚入りなので、裏と表を合わせれば合計で12の辺を使用可能で、しかもたったの100円。使い終わったら気軽に捨てても、コストパフォーマンスは非常に良いと言える。

5.ブラシ

スクレイパーで完全に取り除けなかった微細なワックスや、ストラクチャーがある場合の溝のワックスをクリアするのに役立つブラシ。

主な種類としては、ナイロン、馬毛、ブロンズのブラシがあり、ナイロンブラシがよく使われる。ただし、ナイロンの毛先は粗いため、緻密な部分の掃除には不向き。ブロンズや馬毛ブラシの方が効果的。

同じ材質のブラシでも、メーカーにより毛の長さは様々で、毛の長さが違うと硬さも変わる。短ければ硬い。ワックスをしっかり取り除くためには、適度な硬さと細かい繊維が望ましい。

これらの情報を考慮に入れて、筆者が特に推薦するブラシは以下のものです。非常に優れた品質を持っています。

なお、ブラッシングの際、ワックスメーカーによっておすすめのブラシの種類や使用順番が異なりますが、過度に拘る必要はないと感じます。ブラシの種類については以下の記事で触れています。

スノーボードのソールメンテナンスはブラッシングが命

4.ホットワックスの適用方法

次に、実際の手順を解説します。先ほど触れた通り、手順の概要は以下のようになります。1.固形ワックスをアイロンで溶かして塗布する2.一定時間、冷まして固める3.スクレイパーで余分なワックスを取り除く4.ブラシで磨くポリッシングを最後に加える方もいるが、その効果には疑問があるため、ここでは追加オプションとして考えます。

ソールに傷があるときや、特に汚れている場合、ホットワックスの前にリペアやクリーニングの手順が必要だが、今回の説明ではそれらの前処理は完了していると仮定し、シーズン中によく行うホットワックスの方法に焦点を当てる。

初めに、アイロンをつけて温める点について、ソールを傷めるリスクがあるため、設定温度を高くしすぎないよう注意が必要だ。固形ワックスの包装には大抵、推奨するアイロンの温度が示されており、これは通常約100℃程度となる。

アイロンが十分に温まったらワックスを溶かす。一貫してワックスを溶かして垂らす方法と、ワックスを少し温めて柔らかくしてからソールにこすりつける方法がある。こすりつける方が後の塗布がスムーズに行えるため、こちらを推奨する。また、柔らかいワックスは、アイロンで特別に温めることなく直接塗布できる場合もある。

塗布が均一になるまでワックスを塗った後、アイロンをソールに直接あててワックスを拡げる。筆者は使っていないが、ワクシングペーパーを利用する場合、一方の手でペーパーを持ち、もう一方の手でアイロンを動かす形になる。

アイロンを一ヶ所に長時間置くと、ソールが過度に熱を受けて損傷する恐れがあるので、アイロンは絶えず動かすことが重要。特にアイロンの温度が高い場合は、更なる慎重さが求められる。

100℃の設定の場合、ソールが約3分間温かい状態を保持すれば、それ以降ワックスの浸透はなくなる。ワックスが十分に溶けて広がっても、すぐに作業を中止するのは避け、適切な時間を確保することで滑走性を高めることが大切だ。

塗布後は、ソールを冷ますために一時的に放置する。少なくとも20分は待ち、もしできれば一晩放置すると良い。

十分に時間が経過した後に、スクレイピング作業を行う。スクレイパーで表面のワックスを取り除く。スクレイパーのアクリル材料はソールのポリエチレンより硬いので、強く押し付けないよう心掛けること。特にソールに模様がついている場合は、その模様を損ねる恐れがあるため注意が必要だ。しかし、スクレイピングを十分に行わないと、後のブラッシング作業が難しくなる。

スクレイピングの際の方向は、基本的にスキーの先端から尾部に向かって直線に行う。

ワックスの粉状の残りがほとんど見られなくなったら、ブラシで微細な粉を取り除く。これも先端から尾部の方向で行うことを推奨する。

ブラッシングをすると、白いワックスの粉が現れる。これはやや手間がかかる作業で、ワックスの粉がほとんど出てこなくなるまで続ける。

一部の人は、ポリッシングペーパーを使用して仕上げを加えることもある。これにより光沢が出るが、私の考えでは、きちんとブラッシングを行えば、滑りのパフォーマンスに大きな影響はないと感じる。

これにて、ワクシングの基本的な工程は終了する。より高い滑走パフォーマンスを追求するスキーヤーやスノーボーダーは、このプロセスを何度も繰り返すこともある。

ホットワックスの効果は、しっかりと施工しても1日しか持続しないとも言われるが、他の方法と比べても持続性は高い。基本的には、スキーやスノーボードを楽しむ前日にホットワックスを施すのがベストと推奨される。

5.結論

ホットワックスの方法や、ワックスが浸透するメカニズム、滑走性の低下の原因など、深い内容に触れて説明した。年に数回しかスキーやスノーボードを楽しまない方には、これほど詳しい情報が必要か不明だが、深く追求することでスノーボードの楽しさが増すと感じる。だから、詳細な内容を理解してもらえたら嬉しい。

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