ホットワクシングに役立つスノーボードのソールの基礎知識

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スノーボードの滑走部分はソールと称され、滑走性において最もキーとなる部位である。プロのワクシングを実施する時にも、ソールの構造の知識は必須であるため、ここでその詳細を取り上げることにする。

1.ソールの素材とワックスの浸透メカニズム


スノーボードのソールは主にポリエチレン(PE)から作られている。高校の化学で習うかもしれないが、ポリエチレンは炭素原子と水素原子2個が結合した構造が長い鎖状に連なっている(数百から数百万の単位)。これは一つのポリエチレン分子を表し、これらが集まり固体としてのソールを形成している。

ソールの素材としては、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂なども用いられることがあるが、これらは低価格な板で見られ、ワックスがあまり浸透しない特性がある。


ポリエチレン製のアイテムを作る際には、通常液体状態になるまで熱してから所望の形に成形する。この液体の状態では、長いポリエチレンの鎖が入り組んでいる。

それが冷却されて固体となると、部分的に整然と配列される部分ができる。この範囲は「結晶(crystalline)」と称され、おおよそ0.05~0.1mmの大きさを持つ。それ以外の乱れた部分は「アモルファス(amorphous)」と名付けられ、液体とは違うが、ここでもポリエチレンの鎖が入り混じっている。

結晶部は密に構造されているのに対し、アモルファス部分には多くの空間が存在する。ワックスを塗布する際、ワックスの分子はこれらの空間に浸透する。ホットワックスを使用する時、塗布したワックスを後で取り除くのは奇妙に思えるかもしれないが、実際の目的はワックスをアモルファス部分にしみこませることである。表面上のワックスは、雪やゴミの付着の原因となり、滑走を妨げることがある。

2.エクストルードとシンタードの違い


ソールの材料であるポリエチレンは、成形の方法によって、エクストルード(またはエクストルーデッドとも言われる)とシンタードの二つのタイプに区別される。これらの言葉はスノーボードのブランドカタログにも頻繁に記述されているので、一度は耳にしたことがある方も多いかと思われる。

2-1.構成の差異


ソールに適用されるポリエチレンはその耐久性から、硬く(=質量が大きい)という特性が望まれる。ポリエチレンを硬くするためには、その分子の密度を上げることが必要で、この高い密度のポリエチレンはHDPE(High Density PolyEthylene)と称される。


この「高密度」という条件は、主に2つのタイプの構造に分けられる。一つは、多くの結晶構造を持つもので、結晶領域は分子が密集しているため質が重く、一方、アモルファス領域は軽いので、結晶の部分が豊富であれば、そのポリエチレンは重くなる。

もう一つは、分子の大きさが大きいタイプで、これはポリエチレンの分子の長さが長いことを指す。この条件下で、たとえ結晶部が少なくてアモルファス部が多いとしても、それは質が重く、高い強度を持つ材料として形成される。


この構造の視点から、結晶領域が多い方をエクストルード、分子の大きさが大きい方をシンタードと定義している。

2-2.成型プロセスの違い


エクストルード方式のソールは、基本的には押し出し成型法で製造される。これは、ポリエチレンの粒状または粉末状の原料を、回転するスクリュー内で加熱し溶解させ、細いノズルから外に押し出して冷却することで板の形にする方法である。このプロセスは、常圧または少しの圧力の下で行われるため、結晶構造が多くなり、HDPEとしての特性を持ち、ソールとしての適切な強度が得られる。

一方、シンタード方式は、高分子量のポリエチレンの粉状原料を用いる。この高分子量の材料は粘り気があり、押し出し成型には向いていない。そこで、この原料を型に入れ、加熱して固化させ、それを円筒形にする。この円筒の表面を剥ぎ取るような方法で成型される。この時、加熱とともに圧力も掛けることで、結晶の部分は少なく、アモルファスが主体となる構造を作る。

2-3.エクストルードとシンタード、どちらが優勢か


エクストルードとシンタード、どちらが上質かという問いに対し、ワックスの吸収能力はアモルファス部分に起因するため、アモルファスが多いシンタードが滑走性とワックスの持続性の面で優れている。だが、シンタードの成型は手間がかかり、コストも高まるため、価格はエクストルードに比べて3倍程度高くなり得る。このため、高価なボードにはシンタードが、エントリーレベルや手頃な価格のボードにはエクストルードが採用されることが多い。

シンタードが高価なだけに良い選択と思うかもしれませんが、それは全てのユーザーに当てはまるわけではありません。この差異は、きちんとワクシングやメンテナンスを施している場合のみに限られます。
ワクシングをほどんどしないと、滑走面の保護機能は次第に低下します。特にアモルファス部分はダメージを受けやすく、劣化やワックスの浸透不良が生じます。結果として、アモルファスが多いシンタードは、滑走性能が急速に低下することも。


メンテナンスをあまり行わないユーザーにとって、エクストルードが長持ちする場合もあります。ただし、「エクストルードはあまりメンテナンスが不要」との声も聞かれますが、実際にはワクシングの頻度はシンタードより高くなることも。要するに、エクストルードも定期的なワクシングが必要です。

3.結論


ソールについての上述の情報を踏まえると、現代には様々な種類のソール、例えばグラファイトソールなどが存在する。しかし、これらは基本的にポリエチレンのソールに別の材料を混ぜたもので、ポリエチレンの特性がソールの根底にある。具体的に、グラファイトソールはポリエチレンの静電気の問題を解消するために導電性のあるグラファイトを混入している。


要するに、ポリエチレンの特性を知っていれば、ワクシングと滑走性の関係性もより深く理解することができるでしょう。

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